皆さん、見える収納ってご存じでですか?お家時間が長くなって久しいですが、その間にお家の中の収納を見直したり、整理した方は多いのではないでしょうか?まだまだ体力のある世代の中では「隠す収納」「見せない収納」はスッキリとした見た目で視覚情報が少なく、快適ですよね。
ところがこの「隠す収納」「見せない収納」は、高齢者の方が実践すると不都合な点が多いものです。筋力の低下によって引き出しなどの開け閉めが重く大変に感じたり、何をどこに収納したか分かりづらかったり…という妨げが生じます。結果、「引き出しなどの開け閉めが億劫で開けっ放し」、「物の収納位置や所持数を把握できず、何度も買い直してすぐに手に取れるようそこかしこに置く」などの状態に繋がります。物の置き場が床にまで広がると、転倒やケガに繋がって非常に危険です。
このページでは、こういった危険を回避できるよう、高齢者向けの見える収納方法をご紹介します!見た目はスッキリ、でも何がどこにあるのかよく分かる収納は、安全で快適な日常生活を送るのに効果的です。持ち物が多い場合、収納や整理を手伝うご家族は「捨てることを無理強いせず、使う本人の意思を尊重する」ことが重要視されます。物を減らす事よりも物の取り出しやすさを重視した収納方法を、高齢者の方の家の片付けのヒントとして、ぜひご覧ください。
洗面台で使える見える収納術
まずは、洗面所に注目してみましょう。洗面所では、洗面台下の収納と、洗面台上の収納の方法、そして脱衣所を兼ねている場合はタオルや下着などの収納の方法が重要になりますね。では、それぞれ順番にポイントを押さえていきます。
洗面台下収納の「見える」化
高齢の方は、身長よりも高い場所の収納同様、屈まなければならない低い場所の収納も出し入れが容易でない場合が多いです。また、洗面台によっては扉の開け閉めが高齢者にとっては困難な重さや固さのものもあります。
この2点の解決方法、まず前者に関しては「使用頻度の低いものやシャンプーなどのストックを種類別に整理して、洗面台下収納に入れること」です。収納の奥行きに合った、中身の見えやすいケースを100均などで揃え、種類別に縦に入れます。縦に入れることで、ストックの残りが少なくなると分かりやすくなります。また、こまごまとしたアイテムは吸盤付きのケースを使い、アイテムごとに側面に貼り付けておくのも1つの方法です。
次に後者の解決方法として、「洗面台下の扉の開閉がストレスになる場合は、思い切って扉を外す」という方法があります。扉をなくすことで、中に収納している物に足が当たりケガの元になるのであれば要注意ですが、その危険性がなければ、扉を外す選択肢もあり得ます。
洗面台下の収納のヒント
- 中身がよく見えるケースを活用した収納で、ストックを把握しやすくする
- 洗面台下の扉の開閉が大変なら、扉を外すのもあり
洗面台上収納の「すっきり見える」化
洗面台下には使用頻度の低い物を収納する代わりに、洗面台上は使用頻度の高いものを置く必要があります。ただしここで注意したいのが、「使用頻度の多いものでもあれこれ置き続けると次第に溢れ、必要な物がすぐに見つけられなくなること」、そして「目線より高い場所に置くと、後で取りづらくなること」です。
洗面台上が物で溢れていて掃除しづらい場合は、まず「使える・必要な物」と「壊れている・明らかに劣化などで使えない・用途の分からなくなった物」とを分別しましょう。分別した上で、日常的に必要な物を取り出しやすい、収納しやすい高さまでの範囲内で収納しましょう。
収納場所が足りない場合には、壁掛け式の歯ブラシホルダーやコップホルダーなどが便利です。これらを使うことで洗面台の掃除がしやすくなり、歯磨きグッズも洗面台も清潔に保ちやすくなります。
洗面台上の収納のヒント
- 物で溢れている場合は、まず最初に「使うもの」「明らかに使えない物」を分別する
- 必要に応じて、壁掛け収納や吊り下げ収納も活用する
着替えやタオル収納の「見える」化
脱衣スペースでの着替えの収納に、引き出しタイプのポリプロピレン収納ケースを使う方は多いと思います。中身が見える透明寄りのケースに収納している物の名前を書いて貼り付けると、一目でどこに何を収納しているか分かりやすいですね。ただし、この引き出し式の収納ケースの出し入れが困難に感じる場合には、より出し入れが楽な収納ケースへと替えることをおすすめします。
例えばニトリのフラップボックスは、蓋を片手で持ち上げて収納できます。更に蓋を奥へ押し入れられるので、「蓋の上げ下げをせずに着替えやタオルを出し入れしたい」という場合にも対応できます。「やっぱり収納に蓋が欲しい」と感じたら蓋を戻せるのが、フラップボックスの長所です。
着替えやタオル収納のヒント
- 透明色のポリプロピレンの収納ケースを使うと中身が分かりやすい
- 引き出し式のケース以外に、フラップボックスの選択肢もあり
参考:https://www.nitori-net.jp/ec/product/5609721s/
手持ちの服を把握しやすい、服の収納術
洗面所の次に注目するのは、衣類です。高齢になると、「体温調節が難しくなって夏物と冬物を完全に入れ替えられない」「どれだけの服を持っているのか把握するのも大変」という様な状態になることが考えられます。また、「着られる服をすぐに取り出せるように」と、床置きする服が多くなる場合もあります。床置きの物が増えると転倒の危険に繋がるので、要注意です。
「見える」収納アイテムを使った、服の出し入れがしやすい収納
床に下着や靴下、服、パジャマ、帽子など、ありとあらゆる物が山積みになっている状態なら、まず種類別の振り分けが必要です。振り分け時にあらかじめ用意しておきたいのが、100均などで販売されている、中身が見えるファスナーの蓋付きの不織布収納ケースです。あまりにも大きなサイズのものは、衣類を詰めすぎると高齢者の方が1人で持ち運びするには重くなるので、運びやすいサイズで分割するのが好ましいです。こういったケースに、種類ごとにひとまず収納していきましょう。ここで注意なのは、無理に数を減らそうとしないことです。持ち主が「勝手に捨てられた」と感じては収納に嫌な印象しか残らないため、処分か保留かは持ち主自身に委ねましょう。
靴下など小さな物に関しては、ハンガーラックなどに吊り下げて収納できる衣類用ウォールポケットが豊富な種類で販売されています。この様な衣類収納のウォールポケットも、透明ポケットで中身が見えるので、把握しやすさと収納しやすさの両方を叶えることができます。箪笥の開閉が重く大変な場合、カラーボックスなど奥行きのある収納で整頓しづらい場合は、こういった吊り下げ式の収納アイテムをふんだんに活用しましょう!取り出しも収納も、圧倒的に楽になります。
散乱した衣類の収納のヒント
- まず種類ごとに、中身の見える不織布ケースに分別する
- 「畳んで収納」が大変な場合にはウォールポケットを活用する
収納場所が重くて不便なら、場所の改善も
押し入れの開閉が重い場合は、押し入れの襖を取り払ってしまうのも1つの方法です。また、箪笥の出し入れが重い場合には、箪笥を先ほどご紹介したフラップボックスなどの軽いケースに替えるのも1つの方法です。「収納しやすい環境」を作ることは、整理整頓のしやすさに繋がります。また、衣類を畳むのが大変な場合には、衣類をくるくると丸めて収納したり、ハンガーラックや突っ張り棒を活用した吊り下げ収納に切り替えるのもおすすめです。
「その季節に着る服はハンガーラックに」「翌日着る服はハンガーラックの手前に」「床に置くのは、翌日のコーディネートのみ」など、無理なく実践できる規則性があると、整頓された状態を保ちやすいです。
快適な収納場所へのヒント
- 収納の妨げになる重い襖は取り除くのもあり
- 引き出しが重い場合は、軽い素材のケースに替えると便利
全ての収納に使える「頻度の高いものは目線~腰」ルール
衣類だけでなくキッチン、洗面所、全ての収納に言えることですが、高すぎる場所の収納は手が届きにくく大変な上に、何を置いたか把握しづらいです。また、屈んだ姿勢になる低い場所の収納は、出し入れに都度屈む必要があるため、使う頻度の高いものを収納するにはあまり向いていません。「使用頻度の高いものは目線から腰までの高さ」「使用頻度の低いものや季節のものは低い位置」この2つの収納のポイントを踏まえて収納の位置やハンガーラックの高さを調節することで、収納しやすくなります。
もう1つ、「頻度の高いものの中でも特に頻度の高いものは手前に」のルールを加えると、更に物の出し入れが楽になり、片付けもしやすくなります。今では、収納する物の高さごとに仕切りのついた収納ケースが100均で多数販売されています。高低差を利用すると、すっきり見える収納が実現しやすくなります。
収納方法のヒント
- 使用頻度の高いものは目線の高さまで
- 更によく使うものは手前に置く
- 高低差を利用した収納ケースも上手く活用するとすっきり見える
見える収納は、高齢者の安全で快適な生活の鍵
今回は洗面所と衣類に絞って、高齢者の方向けの見える収納術をご紹介しました。1人ひとり、持ち物への愛着、もったいない精神、片付けをする体力の限界など、抱えているものは異なります。しかし、「何がどこにあるのか把握できる住環境」「足元に物が山積みになっていない住環境」は、確実に安全で快適な生活に繋がります。今回のご提案の中で、収納のヒントになる部分があれば、ぜひ実践しやすいものから取り入れてみてくださいね!