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初心者におすすめの村上春樹小説!なぜ人気なの?その魅力に迫る!

村上春樹小説

読書好きであろうとなかろうと、誰もが1度は耳にする小説「村上春樹」。この記事は、村上春樹とはどんな人物?から始まり、作品の文体や魅力をご紹介した後、まだ読んだことのない方におすすめの、村上作品の短編と長編を合わせて5つご紹介します。

村上春樹小説

小説家・村上春樹とはどんな人物?

誠実で正直者、朝型人間のヤクルトファン。他にも、ミニマリストという訳ではありませんが「何をしないか」を軸に、シンプルな生活を築いていることや無類のレコードコレクター等、さすが小説家!というよりも、一般の方とあまり変わらないのでは…?と思わせる性格と生活ぶりです。

それでも「世界のムラカミ」な訳ですから、何かインパクトのある村上春樹とはこうだ!な言葉が欲しいものです。村上春樹さんのノンフィクション作品『アンダーグラウンド』の取材同行をし、自身もノンフィクション作家である、高橋秀実さんは「村上さんってどんな人?」でこう語っています。村上春樹とは…「その通りの人です!」とのこと。下手に語るよりかはそれぞれの自由裁量に任せようということでしょうか。いいえ。もちろんそうではありません。

高橋秀実さん曰く、「作品の文章と印象があまり変わらない」方だそうです。これは次のセクション「村上春樹小説の文体とその魅力」での方が、より彼の人物像を深掘りできそうですね。その前に、村上春樹さんが歩んできた人生を簡単に見ていきましょう。

<参考ウェブサイト>

・「村上さんってどんな人?」新潮社 https://www.shinchosha.co.jp/harukimurakami/review/353427-r.html
・「シンプルライフorミニマリスト的視点でみる、村上春樹が『しないこと』」http://chouzubachi.blogspot.com/2015/04/haruki-not-to-do.html

村上春樹小説

小説家・村上春樹の歩んできた人生

生まれは、京都府京都市。誕生日は1949年1月12日です。1968年「学生運動」が盛んに行われていた時代に、早稲田大学第一文学部に入学。在学中にジャズ喫茶を国分寺(大学の近く)にオープンさせました。店名は「ピーター・キャット」。以前飼っていた猫から名前を拝借。

1975年には無事大学を卒業します。あの激動の時代の最中に喫茶店も立ち上げ、卒業もしっかりとされており、ここから「一般の方」ではない雰囲気が漂ってきますね。

1978年野球観戦中(もちろんヤクルト戦)に、そうだ、小説を書こう!と思い立ちます1979年、野球会場で思いついた作品『風の歌を聴け』が見事新人文学賞を受賞。その2年後、専業作家になることを決意し、「ピーター・キャット」を閉店させます。

ここからは多くの作品『羊をめぐる冒険』や『カンガルー日和』などを刊行します。あらゆる賞を受賞する作品もあれば、映画化する作品もあり、順風満帆な作家人生を送っていました。プライベートも充実しており、34歳にアテネ・マラソンコースにて42.195kmを独自に完走。同年にはホノルル・マラソン、こちらも42.195kmを完走しています。

転機の到来

転機は1987年9月に『ノルウェイの森(上・下)』を刊行した後に起こります。2009年時点で上・下巻合わせて1000万部を売り上げました。赤と緑一色の特徴的なブックデザインに、当時の若者たちはその本をファッションとして持ち歩いていたそう。

これをきっかけに「村上春樹ブーム」が起こり、国内外問わず、大きな影響力を持つ作家になりました。 デビュー以来、著名な英文学の翻訳やラジオDJを務めたり、2009年2月15日にはイスラエルで受賞スピーチを行うなど、今もなお多方面に活動されています。

<参考ウェブサイト>

・新潮社「村上春樹」https://www.shinchosha.co.jp/harukimurakami/author.html
・「ノルウェイの森:“世界のハルキ”はこうして生まれた 作品誕生の秘密と魅力 担当編集、友人、映画監督が証言『アナザーストーリーズ』」 https://mantan-web.jp/article/20220201dog00m200007000c.html

村上春樹小説

村上春樹小説の文体とその魅力

国語辞典によると、文体とは「その作者にみられる特有な文章表現上の特色。作者の思想・個性が文章の語句・語法・修辞などに現れて、一つの特徴・傾向となっているもの。スタイル。」を表します。

ですので、例え、「間違った」、もしくは辞書に添わない言葉の使い方をしようとも、それはその人の特色・スタイルとみられる訳です。表現に制限がないというのは、文学世界の良いところですね。

肝心の村上春樹さんの文体ですが、①文末が〜ですや〜ますで終わることや、②同語反復が多いこと、最後に③比喩表現が独特であることが特徴的に挙げられます。では順番に見ていきましょう。

<参考ウェブサイト>

・Goo国語辞書「文体の意味」https://dictionary.goo.ne.jp/word/文体/

村上春樹小説の文体の魅力①文末が「〜です・〜ます」で終わること

ブロガーのリクトーさん曰く、『ノルウェイの森』以降の作品(主に長編小説)には断定調の文末があまり見られなくなったとのことです。(6) 確かに村上春樹さんは 「〜だ・〜である」といった、確定的な事象であるかのような表現よりも、「〜です・〜ます」といったあくまで1人の人間の観点にしかすぎない、不確定な表現を好んで使われています。

そのためか、どの作品の主人公もあまり決定的な答えを持っていないように感じます。自分の意思や意見がないのではなく、普遍性というものを信じておらず、1人1人に真実があり、それを否定も肯定もしない。ただそれを「尊重」するといった姿勢を取っています。

高橋秀実さんが言われていたように、「作品の文章と印象があまり変わらない」のであれば、村上春樹という人物は、嘘偽りなく真心込めて他人と接することができる方というのが分かります。

<参考ウェブサイト>

・リクトー「村上春樹の文体の最大の特徴」 https://riktoh.hatenablog.com/entry/murakamis_style

村上春樹小説の文体の魅力②同語反復が多いこと

同語反復とは「同じことを表す言葉の無意味な繰り返し」とgoo辞書には書かれています。「無意味」とはひどい言われようですが、使う場所を間違えると、ただの話下手になってしまうのも事実。日常的によく使われる同語反復とは、「君は大きな犯罪を犯した」や「腐っても鯛は鯛」などの、A=Aにしかならないような答え方です。トートロジーとも呼ばれています。

前述したように、相手に話下手だと捉えられたり、「ちゃんと説明しろ!」と相手を少し苛立たせるかもしれません。村上春樹的トートロジーといえば、「相槌」に色濃く表れています。

例えば『1Q84』の作中、男主人公(天吾)が放った言葉は、脇役に悉くオウム返しされてしまいます。いつもは「僕」が主導権を握り、脇役が言ったことに同語反復の相槌を打ちます。しかしこの作品だけ主人公たちに会話の主導権はもらえず。

極め付けに『騎士団長殺し』では、「私の言ったことをオウムのように繰り返すのはやめてくれない?」と、脇役に言われてしまいます。自虐ネタを入れるほど、同語反復する相槌にこだわっているのが分かりますね。

<参考ウェブサイト>

・Goo国語辞書「同語反復の意味」https://dictionary.goo.ne.jp/word/同語反復/

村上春樹小説の文体の魅力③比喩表現が独特であること

学生の頃に1度は聞いたことがあると思いますが、比喩とはある事象の説明をする時に、他の事象を例に出しながら描写・表現する技法です。

例えば、彼氏・彼女に「どのくらい俺・私のこと好き?」ときかれたとします。そんな時に「死にそうなくらい好き」と答えると、情熱的な比喩表現になるでしょう。相手を想う気持ち(エネルギー)を絶命する程に使ってしまう。その勢いの激しさが窺えます。

しかし、その答えを例えば村上春樹流に答えると、「春の熊くらい好きだよ。」となるでしょう。思わずそれはどのくらい?と思わず2度尋ねてしまいそうな例えですよね。「春の熊くらい好きだよ。」に込められている意味とはつまり、暖かい春という季節に出会う、君子熊が抱き合ってクローバーの茂った丘の斜面をころころと転がって一日中遊ぶ、そんな姿を想像するととても素敵で、それくらい好きだという表現だそうです。春の熊のコンディションや、どういった行動を春にとるのかを知っていなければ、的確に受け取れなさそうな答え方ですよね。

他にも、「山が崩れて海が干上がるくらい可愛い」や、「世界中のジャングルの虎が溶けてバターになってしまうくらい好きだ」など。一癖も二癖もある例え方です。いずれも村上春樹の代表作とも言える『ノルウェイの森』にて実際に執筆されている表現になります。この独特なセンスをした比喩により、読者の好みが別れるとも言われています。あなたはどう感じましたか?

<参考ウェブサイト>
・「村上春樹の小説、文章に学ぶ比喩表現と隠喩表現の特徴と考察。」コピーライティング至上主義の会 https://copyrighting-supremeprinciple.net/?p=1677

村上春樹小説

村上春樹小説の魅力

村上春樹さんが書く小説の魅力といえば、先ほど挙げた3つの文体(ですます調、同語反復、独特な比喩表現)であることは間違いありません。他にも、女性キャラの耳を片っぽだけ出したがることや、料理シーンなどが生き生きしている等、彼の作品の魅力は挙げても挙げてもキリがありません。

興味深いことに、レビューでよく見かけるのが「面白い、気がつけば何回も読んでしまった。けど何を言いたかったのかが分からない」といった書き込みです。おそらく初見であろうとなかろうと、ほとんどの方はこのようなコメントになると思います。それも魅力の1つなのですが。読み難い漢字や言い回しが多いわけでなく、むしろリズミカルで読み易い文章なのに何故そう思うのでしょうか。

読者は作品に著者の考え方や思想、哲学などが色濃く表れることを望みます。それが著者との対話だからです。しかし村上春樹さんは、分かりやすく文字に起こしてハイライトをつけてくれません。なので読み終えた後には、何が良かったのか、この著者は何を1番強調したかったのかを言語化するのに苦戦します。そして・でも?また読んでしまう。なんとも中毒性のある村上ワールドです。

村上春樹小説

初心者にもおすすめ!村上春樹小説の短編と長編小説

ここからは村上春樹作品を読んだことがない、『村上ワールド初心者』におすすめの小説を5つご紹介します。本のタイトルとあらすじ、そしておすすめする理由と作品の見どころを書いています。

おすすめの村上春樹小説①読んで損なし:ノルウェイの森

先ほど『村上春樹小説の文体の魅力③比喩表現が独特であること』のセクションでも出てきました、国内外のベストセラー作品の1つである「ノルウェイの森」。村上春樹の死生観が分かる作品となっております。

あらすじ

“十八年という歳月が流れ去ってしまった今でも、僕はあの草原の風景をはっきりと思い出すことができるーー。1969年、大学生の僕、死んだ友人の彼女だった直子、そして同じ学部の緑、それぞれの欠落と悲しみーー37歳になった僕は、機内に流れるビートルズのメロディーに18年前のあの日々を思い出し、激しく心をかき乱されていた。”

<参考ウェブサイト>

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おすすめの村上春樹小説②6編からなる短編小説:女のいない男たち

こちらの作品は、オムニバス形式の短編小説となっています。ですのでどちらかと言うと取っつき易い作品で、小説を読むことに慣れていない方にもおすすめです。映画化した作品『ドライブマイカー』の原作もこちらで読むことができます。「女」とはなんなのかを、男性目線でジェントルに描かれているような奥深い村上小説です。下記にそれぞれの小説を簡単に紹介しています!この中から気になったものから読んでみても良いかもしれませんね!

『ドライブマイカー』

秘密を抱えた妻を亡くした孤独な男と無愛想な女ドライバー身の上話

『イエスタデイ』

ビートルズの『イエスタデイ』を関西弁に翻訳した男の彼女と付き合うことになった主人公

『独立器官』

52歳の時に歳の離れた人妻に深く恋をして死んでしまった医師と彼を想う僕

『シェエラザード』

若い時に空き巣をしていた人妻とその話をきく浮気相手

『木野』  

妻の不倫現場を目撃してから、自分の「罪」と向き合う男

『女のいない男たち』

昔付き合っていた女の自殺を夫からきかされる主人公。それからパラレルワールド的語り口調に物語は進行していくー。

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おすすめの村上春樹小説③村上春樹の処女作:風の歌を聴け

デビュー作にして驚きの完成度で注目を浴びた作品で、第22回群像新人賞を受賞した作品でもあります。惹きつけられるリズミカルな文体が特徴的です。

あらすじ

“一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。”

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おすすめの村上春樹小説④カフカ的世界が息づく:海辺のカフカ

ギリシア悲劇の『オイディプス王』と日本の古典『雨月物語』『源氏物語』が下敷きとなっている長編小説。摩訶不思議な世界観とサスペンス要素があるという部分がポイントです。年齢も性別も異なった登場人物の魅力的な人柄と重みのある言葉もこの作品の魅力のひとつとなっています。

あらすじ

“「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。”

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おすすめの村上春樹小説⑤:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 

現実世界の物語と異世界の物語が徐々に繋がっていく構成になっており、村上ワールド全開な小説。おそらく1回では不完全燃焼になり、2回以上は読むことになるでしょう。こちらの作品に限ったことではないのですが、毎回のことながら、性格も体格も考え方も異なるチャーミングな女性たちが登場するのも見どころです。

あらすじ

“高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。”

<参考ウェブサイト>

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村上春樹小説

お休みの日は村上春樹小説の魅力にはハマろう!

村上春樹さんとはどんな人物なのか、という話に始まり、小説の文体に滲み出る魅力と、その魅力の豊かさから、彼がなぜ人気なのか、について解説しましたが、いかがでしたか?ご紹介した5つの作品以外にも、村上春樹さんの書く小説は読み易く、文字を追うことが苦ではないものばかりです。1度の読了で理解できるかはまた別の話ですが、何度も読み返したくるのも魅力的です。今回この記事を通して村上春樹の小説が面白そうだな、気になると思われた方は、是非一度読んでみてくださいね。